第2項 インボイスという名の税の連鎖

1.第1節第2節で見た仕入側の益税問題は、消費税の納税をしていない免税事業者が発行した請求書等に基づき、仕入税額控除が認められることに端を発していた。つまり、沼田教授によると「現行の帳簿制度は、『前段階で納付した税の税額控除』を実施する仕組みとしては、明らかに透明性が欠如してい」て「売主の納税義務と買主の税額控除の権利が正確に結合されていないという制度的欠陥が存在する」ことから、その結果として「課税の漏れが構造的に発生」することになる。具体的には「前段階の売主が税を納付していない場合であっても、買主において税額控除が可能になっている」ため、「税率が現在より高くなった場合や複数税率が導入された場合には、制度への不信感が増幅される可能税がある」との指摘であり、「上記の不透明さは、消費者サイドからすると、制度への不信感を抱かせる[280]」危険性を孕んでいるとのことである。

2.この不透明感・不信感は、沼田教授によると「日本の消費税の最大の問題」であるところの「税の連鎖が切断されている」状態に起因している。つまり、「消費税は間接税であり、取引に対する税」であることから「税の連鎖」が重要になるのであって、「取引における売主と買主の課税上の取扱いを同一にしておく必要」があるにもかかわらず、わが国の消費税では「取引相手の課税上の取扱いは無視し、個々の事業者の当該課税期間における人的な課税属性、つまり課税事業者か、免税事業者か、簡易課税事業者かによって、課税事業者の取扱いが決まる」ことになり、つまりは、「税の連鎖が切断されている[281]」状況になっているのである。

そして、インボイス制度が導入されることにより、仕入税額控除が適格請求書等を発行できる課税事業者からの仕入れに限定されたことから、「インボイスに記載された税額が正確に回転し、事業者の税負担ゼロを実現し、かつ、税の連鎖が消費者の段階まで確保され[282]」ることから、「税の連鎖」が回復することになり、制度の不透明感や消費者サイドの不信感の基となった仕入側の益税問題については、ほぼ完全に解消するものと思われる。


[280] 沼田博幸「消費課税におけるインボイスの役割について-EU/VATにおけるインボイス制度の改革を参考として-」会計論叢第5号 明治大学専門職大学院会計専門職研究科(2010年3月)19頁

[281] 沼田博幸 前掲(注)274 87頁

[282] 沼田博幸 前掲(注)274  80頁