第2節 益税発生のメカニズム

下記の図1[84]は、帳簿方式のもとですべてが課税事業者の場合と卸売業者(B)が免税事業者の場合の消費税の数値例を示したものである。

鈴木准教授によると「両者が扱っている商品が同じだと仮定すると、免税事業者であるBは、課税事業者と同じ価格設定をおこなう可能性が高い。そこで、この数値例では免税事業者であるBも、課税事業者と同様に、売上価格を10%だけ値上げするものと想定」すると、「免税事業者であるBの粗利益は、2200円となり、200円だけ増加することになる。この200円がいわゆる『益税』となる」[85]という。

 また、もう少し詳細な分析として森信教授は、「『益税』を定義すると、『免税事業者が、消費税分として、仕入金額にかかっている消費税以上の価格の引上げを消費者に求める場合の、その差額』ということになる。わかりやすく言えば『過剰転嫁』ということである」[86]と指摘している。つまり、図1のケースで言えば、一般的なイメージで言うと、Bの益税額は1000円であるが、仕入のコストに対応する消費税として800円があるので、その分を差し引いた正確な益税額は200円ということになる。逆に「過剰転嫁」していない適切な転嫁をした状態は、Bの売上で言えば、売上価格の10000円に仕入税額800円を加えた10800円ということになる。

 このケースでは、Bが課税事業者と同様の価格設定をすることが前提としてあったが、ここにBが価格競争力のない事業者であったと仮定すると、価格転嫁の問題が発生するため、純粋な益税が、すべての免税事業者に発生するわけではないが、本論では、この免税事業者が課税事業者と同じ値決めをしたケースをシンプルな益税のモデルケースとして採用し、その解決策を探っていくことにする。

 また、森信教授は「益税は免税点制度によってのみ生じているわけではない。後述する簡易課税制度や免税事業者からの仕入れをも税額控除の対象とするような方式によっても生じており、筆者はむしろそちらの方が問題だと考える」[87]とも言及されている。図1で言えば、Bは200円の益税が発生するだけ[88]だが、その裏で小売業者Cが免税事業者から仕入れた11000円のうちの税額1000円の仕入税額控除を受けられることこそ問題であると指摘していることになる。この隠れた仕入側の益税の問題については、第7章で分析していくことにする。


[84] 出所)鈴木善充「消費税における益税の推計」 会計検査研究 No.43(2011年3月)の図1(46頁)をもとに、筆者が税率等を改めて(もとの図では5%の税率を10%に置き換え)作成した

[85] 鈴木善充 前掲(注)84 46頁

[86] 森信茂樹「消費税の課題を考える」 国際税制研究No.17 (2006年1月)39頁

[87] 森信茂樹 前掲(注)86 39頁

[88] 更に言えば、この200円には法人税又は所得税が課税される可能性があるため、その全額が益税となるわけではないことも付け加えたい。