令和3年度の税制改正で退職金の計算方法に
改正がありました。
短期退職手当とは?
前回の投稿では、役員のかたの退職金については計算方法が違うことをお話しさせていただきました。
実はこれに似た改正が役員ではなく従業員のかたにも適用(令和4年の退職分より)になりました。
短期退職手当とは、勤続年数が5年以下である短期勤続年数の従業員のかたに対する退職金です。
この短期退職手当、金額が大きいと退職金のメリットが縮小される可能性があります。
退職金-退職所得控除額が300万円以下の場合
(退職金の額-退職所得控除額)✕1/2
退職所得控除を引いた金額が300万円以下であれば、今までと同じです。
今回、改正が適用されるのは、この金額が300万円を超えるかたに限定されます。
退職金-退職所得控除額が300万円超の場合
150万円+{退職金の額-(300万円+退職所得控除額)}
このように、退職所得控除後の金額が300万円を超えると「1/2」計算のメリットがなくなりました。
難しそうなので、計算例で考えてみましょう。
実際の短期退職手当の計算例
シミュレーションとして、勤続年数5年で退職金を800万円もらったかたのケースを考えてみましょう。
まず退職所得控除は40万円×5年=200万円ですので、退職所得控除後の金額は
800万円-200万円=600万円
600万円は300万円超ですので、今回の改正が適用になるケースですね。
計算すると、
150万円+{800万円-(300万円+200万円)}=450万円
退職所得の源泉徴収税額の速算表 | |||
---|---|---|---|
課税退職所得金額(A)※ | 所得税率(B) | 控除額(C) | 税額=((A)×(B)-(C))×102.1% |
195万円以下 | 5% | 0円 | ((A)×5%)×102.1% |
195万円を超え 330万円以下 |
10% | 97,500円 | ((A)×10%-97,500円)×102.1% |
330万円を超え 695万円以下 |
20% | 427,500円 | ((A)×20%-427,500円)×102.1% |
695万円を超え 900万円以下 |
23% | 636,000円 | ((A)×23%-636,000円)×102.1% |
900万円を超え 1,800万円以下 |
33% | 1,536,000円 | ((A)×33%-1,536,000円)×102.1% |
1,800万円を超え 4,000万円以下 |
40% | 2,796,000円 | ((A)×40%-2,796,000円)×102.1% |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | ((A)×45%-4,796,000円)×102.1% |
こちらの速算表に450万円を当てはめると、税率は20%ですね。
(450万円×20%-427,500円)×102.1%=482,422円
という税額でした。
ちなみに改正前の計算では、206,752円という計算でした。
その差は20万円以上、だいぶ金額が変わりますね。
ちょっとした裏技
この改正には、ちょっとした裏技があります。
短期退職手当に該当しないためには、5年以上働いていればよいのです。
勤続年数の計算は端数は切り上げになるので、5年と1日だけでも働けば、勤続年数は6年としてカウントされます。
5年未満の短期で高額の退職金を支払うケースはそうはないと思われます。
ですが今回このような改正がありましたので、ご注意いただけると幸いです。