小規模事業者には今後も多くの困難が待ち受けている。例えば、人手不足による経営者・従業員の高齢化や、キャッシュレス決済導入に伴う利益率の低下、最低賃金引き上げによる人件費の圧迫などである。また、消費者・事業者との取引は電子化が進んでおり、対応できない事業者は市場から排除されていく。中小企業などの小規模事業者は、今後、デジタル化などの変化に適応し、生産性を上げなければ淘汰されてしまうだろう、とする見方がある[400]。
こうした厳しい現実もある一方で、シェアリングエコノミーやギグエコノミーの発展に見るように新しい技術を活用した新サービスが発展し、新しい形での小規模事業者が急増し、私たちの生活をより便利に、より快適にしてくれるという明るい未来像も描くことも可能であると思われる。その明るい未来像の先には、小規模事業者が行う様々なサービスが所得税や消費税という税収として、わが国の経済にしっかりと反映される形であることが望ましいことは、言うまでもない。
たとえどのような未来であろうとも、事業者免税点制度は小規模事業者に寄り添い、事業経営の妨げにならぬよう制度を進化させていかなければならないだろう。
[400] 清水仁志「インボイス方式導入による益税の抑制」 基礎研レター ニッセイ基礎研究所(2019年11月)6頁https://www.nli-research.co.jp/files/topics/62962_ext_18_0.pdf?site=nli 最終アクセス 2020年1月3日
キャッシュレス決済を導入することで、カード会社や決済業者に対する手数料が発生することから、事業者の利益率は1~5%程度落ちてしまう可能性がある。