退職金を支給する場合、
源泉所得税の計算方法が違います。
従業員のかたが退職して退職金を支給するとき、源泉所得税の計算方法は給料のときの計算方法とはまったく違います。
税金がかかりにくい退職所得
退職金は退職後の生活原資であり、通常の毎月もらうことができる給料に比べると税金を負担する能力(これを「担税力」といいます)が弱いですね。
退職後に無職になってしまうかもしれないかたから、税金を取るのは酷ということで、退職金については税金がかかりにくい仕組みになっています。
退職所得の計算方法は次のとおりです。
退職所得の計算方法
(退職金の額-退職所得控除額)✕1/2
このように退職所得控除を引くことができる上に、所得を1/2にしてくれるため、退職金の金額と退職所得の金額はばだいぶ異なってきます。
退職所得控除額の計算方法
勤続年数が20年以下 40万円✕勤続年数(1年未満端数切上げ)
勤続年数が20年超 800万円✕{70万円✕(勤続年数-20年)}
※金額が80万円未満の場合は、80万円とします。
退職所得の計算方法は次の通りです。
この退職所得に次の税額表から、所得税率を見つけて税額を求めます。
退職所得の源泉徴収税額の速算表 | |||
---|---|---|---|
課税退職所得金額(A)※ | 所得税率(B) | 控除額(C) | 税額=((A)×(B)-(C))×102.1% |
195万円以下 | 5% | 0円 | ((A)×5%)×102.1% |
195万円を超え 330万円以下 |
10% | 97,500円 | ((A)×10%-97,500円)×102.1% |
330万円を超え 695万円以下 |
20% | 427,500円 | ((A)×20%-427,500円)×102.1% |
695万円を超え 900万円以下 |
23% | 636,000円 | ((A)×23%-636,000円)×102.1% |
900万円を超え 1,800万円以下 |
33% | 1,536,000円 | ((A)×33%-1,536,000円)×102.1% |
1,800万円を超え 4,000万円以下 |
40% | 2,796,000円 | ((A)×40%-2,796,000円)×102.1% |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | ((A)×45%-4,796,000円)×102.1% |
この表は、ちょっと見づらくて難しいそうですね。
退職金の税金の計算例
では、退職金の額の計算について、実際に計算してみましょう。
勤続30年で、2,500万円の退職金をもたったかたのケースです。
まず退職所得控除を計算します。
勤続年数20年超の欄を参考にします。
800万円+{70万円✕(30年-20年)}=1,500万円
次に退職所得を計算します。
(2,500万円-1,500万円)✕1/2=500万円
退職所得500万円の税率は、速算表から20%と分かりました。
では、所得税額を計算してみましょう。
(500万円×20%-427,500円)×102.1%=584,522円(円未満切り捨て)
住民税もかかります
これとは別に住民税もかかります。
住民税の計算は、退職所得に10%をかけるだけです。
500万円×10%=50万円
これらの所得税額、住民税額を天引きして退職金を支給します。
このように退職金が2,500万円と高額であっても、勤続年数が長いほど退職所得控除が大きくなり、税額は少なくなります。
退職所得控除はどんなかたでも最低80万円となりますので、少額の退職金であれば、ほとんど無税で渡すことができますね。