わが国の消費税(以下、単に「消費税」と呼ぶ)の納税義務者については、法5条1項において、「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務がある。」と定めている。
その例外規定として、法9条では、小規模事業者に係る納税義務の免除について定めている。その概要は、次のとおり1である。
⑴その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円2以下の事業者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税の納税義務を免除する(法9条1項)。
⑵免税の判定の基準となる「基準期間における課税売上高」とは、次の金額をいう(法9条2項)。
①個人事業者及び基準期間が1年である法人……その基準期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額(消費税抜き)の合計額からその基準期間の売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額
②基準期間が1年でない法人……上記①の残額を、その法人のその基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額
⑶納税義務を免除されることとなる事業者が、基準期間における課税売上高が1000万円以下である課税期間につき納税義務の免除を受けない旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合には、その提出日の属する課税期間の翌課税期間から納税義務者となる(法9条4項)。すなわち、課税事業者となることを選択できる。
⑷上記⑶により課税を選択した事業者は、事業を廃止した場合を除き、課税選択によって納税義務者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、課税選択をやめようとする旨の届出書を提出することができない(法9条6項)。つまり、課税選択をした場合には、2年間は拘束されることになる。
- 1 武田昌輔監修『コンメンタール消費税法』 第一法規 (2019年)1593~1594頁
2 法施行当時は、3000万円。