第1節 事業者免税点制度の縮小

第8章 今後の事業者免税点制度のありかた

1.本論文では、事業者免税点制度に関する様々な問題を扱ってきた。その中でも特に対処すべき問題は、第2章の判例で見た脱税スキームの問題と第3章に見た益税の問題である。

脱税スキームに関しては今後のインボイス制度の導入により、免税事業者からの仕入れに関して免税事業者はインボイスを発行できないため仕入税額控除が制限されることから、解決に向かう方向が示されている。

益税の問題に関しては、税率の上昇に伴って事態が深刻化している状況である。

2.そこで益税問題に対する解決策の一つとして、法人については事業者免税点制度を廃止することを、筆者は改めて提案したい。なぜならば、第6章第5節で確認した通り、規制されるべき対象はその多くが法人を設立することによりスキームが仕組まれている現状があるためである。

ただし、「法人といってもその形態は多様であり、すべての法人について一律に事業者免税点制度から除外することは困難である[349]」として、PTAや同窓会といった者についても納税義務を負わせてしまうことを問題視する声もあった。この問題については、消費税法が「人格のない社団等」を「法人」とみなす[350]ことから生じる問題であるが、税務署長に一定の申請をすることで、納税義務を免除する方法等で対応するなどの配慮を検討すべきと思われる。

3.また個人事業者については、第7章第2節の「小規模事業者の実態」で見た通り、労働者か個人事業者なのかが曖昧な個人請負型就業者が100万者近く存在している状況を確認してきた。中でも、シルバー人材センターに加入する会員のような者を事業者とみなして、消費税を課する必要はないと思われる。反対に年間に課税売上高が800万円~900万円に及ぶような免税事業者の個人タクシー運転手を想定すると、同料金で営業する課税事業者のタクシー運転手との不公平性が問題[351]になる、と思われる。

4.更に新たなる個人事業者の形として現在、急速にその存在感を強めているのが、シェアリングエコノミーの個人間取引である。

シェアリングエコノミーとは、個人等が保有する活用可能な資産等を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動である。ここで活用可能な資産等の中には、スキルや時間等の無形のものも含まれるという[352]。西山教授によると、この説明はシェアリングエコノミーと聞いて一般にイメージする、Airbnb、Uber、ネット上のフリーマーケットのメルカリなどのビジネスモデルの説明には十分であるものの、実態はこれらビジネスが行う「耐久消費財(住宅、自動車など)のシェア」および「各種サービスの提供」にとどまらず、更に多岐にわたっているという[353]。シェアリングエコノミーの市場規模は矢野経済研究所によると、2016年度539億円であったのに対し2022年度には1386億円にのぼると予測されている[354]ことから、その高い成長性を伺うことができる。そしてシェアリングエコノミーはわが国のみならず世界においても、まだまだ黎明期と言える状況であり、技術の革新に連動する形で飛躍的に発展する分野である可能性が高い[355]

 そして、このビジネスの中心をなすのが個人間取引であるC to C取引であり、この取引(サービス)の提供者である個人が副業として反復継続的に相当金額を得て[356]取引を行っている場合において、基準期間における課税売上高が1000万円を超える場合には消費税の納税義務者となるべきである[357]

5.ただし、この新たなる個人事業者であるP to P取引は、副業・兼業として行われるもの[358]も多く、現状の基準期間における課税売上高(1000万円)の基準では捕捉できない事例が殆どであることも想定される。その結果として、競業する他の事業者に課税の点(だけではなく、施設にかかる行政規制の点でも)で不利な競争を強いていることが、シェアリングエコノミーの最大の課題となっている[359]

それと同時に、Uberの事例では、利用者が事業として対価を支払って利用した場合に、サービス提供者(運転手)のほとんどが課税事業者でないことから、インボイスの発行を受けられず、利用者は仕入税額控除が受けられないことも問題化している[360]

 そこで筆者は、個人事業者については300万円程度まで免税点を下げることで、従来の益税問題や新たなるシェアリングエコノミーに対する不公平感の問題を解消させることを提案したい。この300万円という基準は「所得税の現金主義による所得計算の特例を受けるための手続[361]」における小規模事業者と平仄を合わせる[362]ものであり、また、事業者としての専業事業者か副業・兼業事業者かを見極める基準としても適当と思われるためである。

6.シェアリングエコノミー、ギグエコノミーにおける新しい個人事業者については、従来の事業者概念[363]でどこまで対応できるか未知数なところがあり、今後も注視すべき分野であると筆者は考える。

 また、シュアリングエコノミーの発展自体は望ましい変化であるが、消費税制の観点[364]からはP to P取引の規模が無視できないほどになった場合の対応が困難になる面があり、非登録者同士の取引についての情報に課税当局がアクセスするのはほとんど不可能であり、課税漏れリスクが高まるとの声もある[365]

その際は、「プラットフォーマー[366]と課税当局間の協力関係にもとづき、プラットフォーマーが保有している消費税関係の情報が課税当局に正しく伝達されることにより、既存の事業者に対する消費課税との間に齟齬がないようにするべき」であり、「ただし、その協力関係構築のためには、プラットフォーマーが複数の国でビジネスを展開しているということを踏まえ、事業者側の伝達手続の国際的標準化やコンプライアンスコストの軽減が不可欠である[367]」という視点が重要と思われる。


[349] 望月俊浩「消費税の複数税率化を巡る諸問題」 税務大学校論叢第42号 税務大学校(2003年6月)224頁

[350] 法第3条(人格のない社団等に対するこの法律の適用)

 人格のない社団等は、法人とみなして、この法律の規定を適用する。

[351] わが国においては法規制の影響もありほとんど普及していないが、世界的にはUberやLyftといった配車サービスアプリによる個人タクシーが爆発的に普及している状況があり、既存のタクシー業界は消費税の課税事業者であり個人タクシーは免税事業者であることから、その不公平性が問題視されている。(本稿では、このあとイギリスにおけるUberの例を取り上げる)

[352] 総務省「平成29年版情報通信白書」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc110000.html 最終アクセス 2019年12月29日

[353] 西山由美「シェアリングエコノミーに対する消費課税」 租税研究第828号(2018年10月)日本租税研究協会 126~127頁

 その内訳は西山教授によると、第一に、その内容において、「非耐久消費財(食事)の提供」「投資財(機械、工場など)」「無形資産(クラウドファウンディング)」も含まれる。

 第二に、その目的において、営利活動のみならず非営利活動(純粋な慈善活動)も含まれる。

 第三に、その当事者については、デジタルサービスに対する所得課税および消費課税を考えるときに想定される「事業者間取引」(以下B to B取引という)および「事業者・消費者間取引」(以下「B to C取引」)に加えて、「個人間取引」(Peer-to-Peer取引、以下「P to P取引」がビジネスの中心を成すことが多く、課税の局面でも論点となる、という。

[354] 矢野経済研究所「シェアリングエコノミー(共有経済)サービス市場は2桁増のペースで成長!」プレスリリースNo.1988

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1988 最終アクセス 2019年12月29日

[355] 2019年5月スマートフォンを活用する配車サービス大手、米ウーバーテクノロジーズがニューヨーク証券取引所に株式を上場し、時価総額は円換算で8兆円超に達した。 

ウーバーは2009年に発足し、一般のドライバーが利用者を運ぶライドシェアで急成長した。約60ヵ国・地域で毎月9100万人が同社のサービスを使い、利用者は2年前に比べて倍増した、という。 日本経済新聞「〔社説〕ウーバー上場の意味するもの」日本経済新聞電子版(2019年5月19日)https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXMZO44990400Y9A510C1SHF000 最終アクセス2019年12月29日

シェアリングエコノミーの旗手として、この企業に対する投資家の期待と評価の高さが時価総額の8兆円超という数字に表れている。ちなみに日本において時価総額が8兆円を超える企業はトヨタ自動車他数社しかない。

[356] 問題になるのは、「お金を使うことなくスキルの物々交換が行われる場合である。たとえば、自分の子供の面倒をみてもらう代わりに英語を教えてあげる、という本人同士が合意する場合」という例が紹介されている。

森信茂樹『デジタル経済と税 AI時代の富をめぐる攻防』 日本経済新聞社(2019年4月)159~161頁

[357] 配車プラットフォームを運営するUber、民泊プラットフォームを運営するAirbnb、インターネットオークションを運営するeBay(わが国では、メルカリやヤフオク等)などを介して運転サービス、宿泊施設の提供、物品の販売を行う個人などが想定される。 西山由美 前掲(注)353 132~133頁

[358] このプラットフォーム(UberやAirbnbといった企業が運営するインターネット上のサイト)を介して単発の仕事を請け負う労働形態は「ギグ・エコノミー(gig economy)」と呼称されている。

佐藤了「シェアリング・エコノミーの問題点」 調査と情報No.985 国立国会図書館(2017年11月)1頁

[359] 西山教授が、具体例として英紙Financial Times(2017年1月3日付)の「Airbnb、法律の抜け穴を利用してホテルに勝つ」という記事を紹介している。

 その内容は、「Airbnbによれば、住宅シェアの大きな利点は、旅行者にとっては費用節約、ホストにとっては副収入の獲得だという。しかしながらホテル業界は、衛生管理、バリアフリー、防災設備などあらゆる点で法的規制に格差があることから、アンフェアな競争状態にあるとの不満を抱く。(中略)典型的なロンドン市内のホテル料金にかかる付加価値税と資産税の負担は、付加価値税の仕入税額控除後でも17%である。他方、Airbnbによる滞在は、年間83000ポンド(筆者注:イギリスの付加価値税の免税点)までは税が課されないため、ごくわずかのホストしか納税しないことから、税負担はわずか0.6%となっている」という。

西山由美 前掲(注)353 128~129頁

[360] 西山由美 前掲(注)353 134頁

[361] 所得税法第196条

 法第67条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)に規定する居住者で前条各号に掲げる要件に該当するもののその年分(不動産所得を生ずべき業務及び事業所得を生ずべき業務の全部を譲渡し、若しくは廃止し、又は死亡した日の属する年分を除く。)の不動産所得の金額及び事業所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額に算入すべき金額は、法第2編第2章第2節第3款(収入金額の計算)(法第41条(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)を除く。)の規定の適用を受けるものを除き、その者の選択により、これらの業務につきその年において収入した金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入した場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とすることができる。

[362] 所得税法第196条における小規模事業者は、前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額を基準としているが、消費税法の基準は前々年分の課税売上高である点で、異なることを周知する必要はある。

[363] 2016年に英国労働裁判所において、「Uberの運転手は被用者である」という判断が示されており、その判断の中で「ロンドンのUberはプラットフォームで連結されている3万の小規模事業者のモザイクから成り立っているという考え方は、一般的に奇異に感じられる」と述べられた、という例が紹介されている。

西山由美 前掲(注)353 134頁

[364] シェアリングエコノミーに対する消費課税について、EU加盟国がそれぞれ措置を講じ始めている例が西山教授によって紹介されている。

 アイルランドは、2016年に「シェアリングエコノミー租税センター」を設立し、プラットフォームを用いて利益を得た個人の申告納税をサポートしている。

 ベルギーは、やはり2016年に「プログラム法」を制定し、一定の条件(個人間取引であること、認可プラットフォームを通して支払がなされていること等)のもとで、付加価値税の納税義務を免除することとした。

 エストニアは、2015年に配車サービスの領域で、提供者(運転者)と利用者がプラットフォームに登録している場合、取引終了後にプラットフォーマーが課税当局に取引金額を通知するシステムを構築した。このデータは課税当局が運用している最新システムに連動して所得税申告が自動的に行われる。これは、配車サービス提供者の所得税申告システムであるが、これは消費課税にも応用することは可能であろう、とのことである。

西山由美 前掲(注)353 135~136頁

[365] 渡辺智之「経済の電子化と消費税制の対応」 ジュリスト1539号 有斐閣(2019年12月)32頁

[366] プラットフォーマーとは、インターネットサイトやスマートフォンアプリなどで取引の基盤(プラットフォーム)を提供する事業者をいう。高度な技術により、瞬時にサービスの提供者と利用者をマッチングする企業であり、本稿ではUberやAirbnb、メルカリ等がその代表例として挙げられる。IT業界におけるプラットフォーマーはGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)が有名。

[367] 西山由美 前掲(注)353 137頁

第2節 基準期間の廃止

1.次に取り上げるのは基準期間の問題であり、本稿では第4章において、その問題を掘り下げてきたため、ここで改めてその内容を繰り返すことはしない。

 日本税理士連合会はこの問題について、以前から「前々年又は前々事業年度を基準期間として当該課税期間の納税義務を判定する現行の制度では、その課税期間の課税売上高が多額であっても免税事業者となり、反対に、その課税期間の課税売上高が少額であっても納税義務を負うような不合理な現象が生じる」として、「基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、すべての事業者を課税事業者とした上で、当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合は、選択による申告不要制度を創設すべきである[368]」という主張を繰り返してきた[369]

2.第4章で扱ったリーマンショック時のような緊急時の場合はもとより、先に見たシェアリングエコノミーの時代のスピード感覚と2年間という基準期間と課税期間のズレは、余りにも開きが大きすぎるため、日本税理士連合会の主張に倣って、筆者は基準期間の判定の廃止を提案したい。代案として、①EU諸国に見られるような「前暦年の課税売上高及び当期の見込み課税売上高基準」②日本税理士連合会の主張する「当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合は、選択による申告不要制度」③オランダに見られるような「売上ではなく、当期の納付税額(オランダにおいては18万円程度)を基準とする制度」の3つのパターンを挙げてみた。

3.①は、例えばドイツにおいて採用されている。ドイツの事業者免税点制度[370]は、前暦年の売上金額と当暦年の売上見込み金額によって納税義務が判定され、当暦年の売上見込み金額が確定していない状況であれば、当暦年中でも課税事業者を選択することができる。このように柔軟な課税事業者選択を認めているのは、小規模事業者に原則的課税方法に促すためである、という[371]

わが国においてもインボイス制度の導入が決まり、取引排除の問題が出てきた以上、ドイツのような小規模事業者に課税事業者選択を促す、このような柔軟な仕組みを参考にすべきと筆者は考える[372]

また、この方法によれば、免税事業者が高額な設備投資をしたことにより還付を受けようとする場合には、前事業年度末までに納税地の所轄税務署長に届出書を提出しなければならず、この届出の仕組みを知らずに控除を受けることができないという「損税」の状況を生みだしていたことに対する解決策にもなろう。

ちなみに基準金額については前暦年、当暦年ともに300万円の基準に統一した方が、簡素な仕組みとして優れているものと考える。

4.また②の案は、「当年又は当事業年度の課税売上高が一定金額以下である」という一定金額がどの程度なのかが判然としないが、現状の1000万円の基準で考えるのであれば、これは大きすぎるため採用することは難しい。そこで、もしこの案を採用するのであれば、やはり基準は300万円程度とすべきであると考える。

③については、納付額を基準にしたオランダの例である。そもそも、売上に対して付加価値が高いか低いかは、業種によってかなりの格差があるという事実[373]があることから、納付税額基準を免税事業者の判定基準とすることも、将来的には検討すべき課題[374]の一つと思われる。

現状で言えば、基準としては納付税額が10万円以下の申告については申告不要とするような考え方も、選択肢の一つとして考慮に入れても良いと思われる。そのことは、先に見たPTAや同窓会が課税事業者となりうる問題に対する一つの解決策にもなり得るものと考えるためである。


[368] 日本税理士連合会「令和2年度税制改正に関する建議書」 (2019年6月)15頁

[369] 筆者の確認できる範囲では「平成15年度税制改正における建議書」まで、遡ることができた。

[370] 西山由美 前掲(注)177 131頁

⑴国内事業者について、課税売上金額(税込み)が前暦年17500ユーロを超えず、かつ当暦年の課税売上見込み金額が50000ユーロを超えない場合、当該事業者から売上税を徴収しない(ドイツ売上税法19条1項1文)。

⑵上記⑴が適用される事業者がこれを放棄したい場合、税額が確定するときまでに所轄税務署に放棄の申請をすることにより、申請した暦年の開始日に遡って課税事業者となる(同条2項1文)。

⑶上記⑵の申請をした場合、適用を受けたい暦年の税額の確定後は、少なくとも5暦年は課税事業者を継続しなければならない(同条2項2文)。

[371] 西山由美 前掲(注)177 132頁

[372] ただし、課税事業者選択後の5暦年に及ぶ継続要件は余りに長く、制度適用の機動性を損なうことから、この点を参考にする必要はないと思われる。

[373] 免税点が1000万円であることによる国庫(地方も含む)税収への影響を考えると、仮に課税期間における課税売上高(税込)が1000万円の場合に、簡易課税制度によるみなし仕入率を参考にすると以下のようになる。

①卸売業    1000万円×10%×10%=10万円

②小売業    1000万円×20%×10%=20万円

③製造業    1000万円×30%×10%=30万円

④その他の事業 1000万円×40%×10%=40万円

⑤サービス業  1000万円×50%×10%=50万円

⑥不動産業   1000万円×60%×10%=60万円

このようにサービス業や不動産業など(みなし)仕入税率の大きい業種ほど、免税額は大きくなるといえる。

植田卓「消費税制度改革案の実務的検討-国民の信頼性と制度の透明性の向上に対する施策について」 税研VOL.18No.2 日本税務研究センター(2002年9月)42頁

[374] 西山由美 前掲(注)111 729頁

 西山教授は「免税事業者の認定基準を総売上基準でなく、納付税額基準とするコンセプトも一考の余地があろう」としている。

第3節 取引排除問題の回避方法

1.前節のドイツの例では取引排除に問題に対して、機動的な課税事業者判定を設定することで課税事業者を選択するインセンティブが働くような仕組みが構築されていた。この仕組みにより課税事業者を選択する事業者については取引排除の問題は、ある程度解決されることとなった。

 しかし、業種によって取引の途中に課税事業者以外の者(個人や小規模事業者)が関与する場合、特に中古品取引において控除できない税額累積の問題[375]が生じることがある。

 EU域内の共通システムではこの問題に対処するため、中古品、芸術品、収集品及び骨董品取引について、販売価格から仕入価格を差し引いた価格に税率を乗じて納税額とする差額課税方式(margin scheme)を1994年から取り入れているという[376]

2.わが国では、与党税制協議会が軽減税率制度の導入を、平成26年度与党税制改正大綱において決定したことを受け、マージン課税について国民に広く意見を聞きながら検討することとした試案[377]を打ち出している[378]

同試案によると、マージン課税の適用を受けるためには、原則として古物等を一品管理し、仕入に係る情報(仕入先、仕入価格)に加えて売上に係る情報(売上先、販売価格)も明らかにする必要がある。また、1万円未満の古物の取引等には記帳義務が免除されているものの、別の形での新たな記帳義務を課す必要があるとされている。このようにマージン課税制度はそのものが例外規定でありながら、その制度中にも例外が生まれる仕組みであり、簡素な制度を志向する方向性には逆行しているようにも思われる。

3.そのため、このような例外を認めてしまうと消費税の本来の姿から逸脱してしまうので、最初から設けるべきではないとする専門家[379]や消費税の美点であるシンプルさをどんどん浸食しているとする専門家の指摘[380]もあり、導入への慎重論は根強いものがある。

その一方で、「二重課税を排除するためには、マージン課税制度の導入は不可欠である。同時に、そのような特例措置を適正に運営していくための新たな手続きを検討していく必要がある[381]」として、導入は不可欠とする強い姿勢を打ち出す専門家もいる。また「日本ではもう少し広い範囲で、すなわち、小規模事業者が介在するために仕入税額控除が遮断される場合だけでなく、非課税取引に係るために仕入税額控除が遮断される場合にも利用できるかもしれない。利用範囲の設定次第では税収にも影響を及ぼすことにも注意を払いつつ、さらなる検討の余地はある[382]」として、応用を効かせた形での導入に積極的な姿勢を示す専門家も見受けられた。

筆者はシンプルさを失うという意味では同制度の導入には懐疑的であるものの、西山教授が提案する欧州型のマージン課税制度に新たな応用を効かせた形での導入には一考の価値があるように思われる。

また、中古品のリサイクル事業自体は国を挙げて取り組むべき課題でもあり、また先に見たシェアリングエコノミーの取引対象としても、まだまだ拡大する可能性が大きい分野であると考えられるため、本特例を採用することを検討すべきと筆者は考えるのである。


[375] ドイツでは自動車関連産業が主要産業の一つであることから、中古車ディーラーのもとでの税額累積、すなわち個人から仕入れた中古車について仕入税額控除ができないことが問題視されていた。

西山由美 前掲(注)177 135頁

[376] 西山由美 前掲(注)177 135頁 EU指令311~343条

[377] 平成26年度与党税制改正大綱 資料7「マージン課税制度について」 与党税制協議会(2014年6月)28頁

 同協議会は、「消費税の軽減税率に関する検討について」と題する報告書を平成26年6月5日に公表し、「線引き例と財源について」「区分経理について」「簡易課税とマージン課税について」の3点について、国民に広く意見を聞きながら検討することとしている。

[378] 熊王征秀「簡易課税とマージン課税」 税務弘報第62巻第9号 中央経済社(2014年9月)74頁

[379] 金井恵美子・熊王征秀「インボイス制度は可能か-区分経理方法・簡易課税・マージン課税」 税務弘報第62巻第9号 中央経済社(2014年9月)57頁より熊王教授発言

[380] 金井恵美子・熊王征秀 前掲(注)379 57頁より金井税理士発言

[381] 森信茂樹「monthly TAX views -No.18-軽減税率・インボイス導入と共に必要となる『マージン課税』」 Profession Journal No.76(2014年7月)

https://profession-net.com/professionjournal/tax-article-103/ 最終アクセス 2020年1月2日 

[382] 西山由美 前掲(注)177 137頁

 非課税取引に係る仕入税額控除の遮断の問題は大きな問題であるため、西山教授の説くマージン課税拡充策についてはかなり慎重な議論が必要になると思われる。

第4節 電子化による事務負担の軽減

1.本章第1節では、事業者免税点制度の縮小を検討し、筆者の代案を提示してみた。その案は、従来の制度から見た場合に小規模事業者に対し厳しい内容となっていることも否定はしない。

しかし本稿では事務負担の軽減として、従来型の放任という形ではなく、新しい技術を活用した真に事務負担を軽減させるような形での事業者免税点制度の姿を模索していく。

そこで、現在導入予定されている新たな申告手続きや電子化の試みについて検討を行うことにしたい。

2.2020年4月からは資本金1億円以上の大法人による法人税と消費税の電子申告の義務化が始まり[383]、会社員の年末調整も2020年分からインターネットで手続きを済ませられるようになり、医療費控除の確定申告も2021年分からデータ入力が自動化することになる[384]。このように申告手続きの電子化の動きは漸進的ではあるものの確実に進みつつある。

 特に年末調整については、事業者の事務負担が大きい分野であったため、この手続きの電子化は事務負担軽減策として評価すべきと思われる[385]。また、医療費控除の還付申告は、確定申告の全申告数の半分以上を占めており、税務署も2月の確定申告のため大量のアルバイトを雇って多大な手間をかけているという現状が改善されることから、医療費控除の合理化は納税者と課税庁側の双方にとって大きな意味を持っている[386]、と森信教授は評価している。

3.また、総務省は企業間でやりとりする請求書などの電子書類が本物だとする公的な認定制度を2020年度に設けるとの報道もあり、同制度の対象は「タイムスタンプ」と「eシール」という2つの証明サービスである。総務省は、インボイスへの活用も見込んでおり、eシールを使えば適格事業者であることを証明しやすくなるとみている。また、証明サービスの活用で電子化が進めば、平均的な大企業1社あたり1ヶ月の経理系業務が10.2万時間から5.1万時間に半減するとの民間試算もあるという[387]

 更には、政府・与党はクレジットカードや電子マネーなど現金を使わないキャッシュレス決済による経費精算で一定の条件を満たせば、税務申告に必要な領収書を紙で保存しなくても良いことにする方針を示した[388]。これにより支払日や決済額を示すデータを領収書と同じように扱えるようになり、働く人の事務作業を大きく軽減できる、という[389]

 キャッシュレスの分野で言えば、2019年10月1日からの消費税の税率変更に合わせて、キャッシュレス決済についてはポイントが還元されるキャッシュレス・ポイント還元事業も開始されている[390]

4.これらの一連の動きを見ていると、申告手続きの電子化は確実に進んでいる上に、電子インボイス導入に向けた布石[391]も着々と打たれているように思われる。そして、電子インボイスを導入するにあたっての注意点は、紙媒体と電子媒体、両方を保管するということを避け、できるだけ電子媒体だけにすることである。なぜならば事務負担の軽減のための電子化である以上[392]、紙媒体と電子媒体の2重の保存を強いてしまうことになれば、本末転倒となるためである。

それと同時に中小事業者への配慮も怠らないようにすること[393]だろう。なぜならば、事務負担の軽減効果を狙った一連の電子化の流れは、デジタルネイティブ世代[394]より若い世代の年齢層の事業者には歓迎されても、それ以前の年齢層の事業者には、逆に理解や習熟の点で負担の増加につながる恐れがあるためである。

つまり、電子化への取り組みは事業者の世代間において理解度や習熟度に大きなギャップがあるため、導入に当たっては世代間のこうしたギャップを考慮に入れて、既存の方法と新しい方法を併用しつつ漸進的に進めていく必要があると思われるのである。

5.また、事務負担の軽減のためには、電子インボイスの導入に加えて、記入済み申告書の導入も検討すべきであろう[395]

 所得税の分野での記入済み申告書は既に海外での導入事例も多い[396]ことから、わが国においても実現の可能性は高いと思われる。しかし、導入国の多くは年末調整が無い国であり日本で考えるべきは、記入済申告書の導入ではなく、年末調整の簡素化や効率化である、とする政府側の見解も示されている[397]ことから、議論は今後も続くと思われる[398]

その先には消費税の分野でも電子インボイス等の活用により、記入済みの申告書を導入し小規模事業者を事務負担から解放することで、より事業経営に集中できる環境づくりを行うことが重要となることだろう。第7章第5節に見た韓国の例では、年間売上高1億ウォン(1000万円)以下の小規模事業者についてのみ導入されていたことから、わが国においても対象を小規模事業者のみに限定することで、課税庁側のコストを抑えることも可能になると思われる。韓国と日本では、その置かれた状況に差異があり、一概に真似をすることはできないものの見習うべき点は多いだろう[399]

 そして、玉岡教授の指摘のように客観的な効果測定を行うことで、新制度の導入前と導入後における事務負担が本当に軽減されているかどうかをチェックする仕組みを作ることも、今後の重要な課題となることだろう。


[383] 日本経済新聞朝刊(2019年11月16日)

 令和2年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用。企業側の準備が進んでおらず、2019年9月時点において紙で申告している大企業が少なくとも3割あることが判明した、という。

[384] 日本経済新聞朝刊(2019年11月30日)

 この電子化で大きな役割を担うのが政府の運営する「マイナポータル」というサイトであり、このサイトに生命保険料や地震保険料、住宅ローンの年末残高など、各種控除に必要なデータが金融機関から集められる、という仕組み。紙の証明書は添付不要で、年末調整を行っていた会社側のチェック作業等の事務負担は大幅に軽減される。

 医療費控除の確定申告についても、加入する健康保険制度から、払った医療費のデータがマイナポータルに自動的に集まる仕組みにより、電子送信するだけの手続きとなる。

 いずれの手続きもマイナンバーカードを必要とすることから、カードの取得実績が1823万と国民の約14%に留まっている現状があり政府は普及促進に躍起、であるという。

[385] 森信茂樹 前掲(注)356 207頁

 この動きに対し「納税者がマイナポータルなどで電子的に必要な情報を受け取り経理に送付するということで、どこまで企業の事務が効率化されるのでしょうか。また、勤務先の年末調整のために納税者が自らポータルを開設して必要な書類を電子的に入手して経理に送付するというのは、二度手間といえないでしょうか。

年末調整制度は、税務当局にとってはありがたい制度ですが、納税者にとってみれば、会社にさまざまな情報を提供しなければならないので、プライバシーを知られるのが嫌だということで、年末調整をしない納税者が増えているという事実もある」として、森信教授は年末調整制度とその電子化に懐疑的な姿勢を示している。 

[386] 森信茂樹 前掲(注)356 210頁

[387] 日本経済新聞朝刊(2019年11月28日)

 タイムスタンプは電子書類が作成された時刻を証明し、それ以降に改ざんされていないことの証拠になる。eシールは電子書類を作ったのがその企業であることを証明する。欧州で普及し、日本でも徐々に広まっている。

 タイムスタンプの認定制度は2020年度、eシールは2021年度に設ける、タイムススタンプは総務省が直接認定し、eシールは総務省の基準に基づき民間が認定する仕組み、であるという。

[388] すでに、2019年12月20日に閣議決定された令和2年度の税制改正大綱に盛り込まれた。2020年10月から施行予定である。

令和2年度の税制改正大綱 財務省HP(2019年12月)77頁

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/20191220taikou.pdf 最終アクセス 2020年1月6日 

[389] 日本経済新聞朝刊(2019年12月7日)

 企業は今でも領収書をデータで保存することが認められているが、情報改ざんを防ぐための厳しい内規を作ることが義務づけられている。また財務省によると、大半の企業は念のため紙も保存しているという。

[390] 事業概要は「消費税引き上げ後の消費者喚起とキャッシュレス推進の観点から、10月1日からオリンピック・パラリンピック直前の2020年6月末までの9か月間実施される中小・小規模事業者向けの支援制度」とされ、消費者へのポイント還元は、中小・小規模事業者が5%、フランチャイズチェーン・ガソリンスタンドなどは2%とされている。 経済産業省HP 

https://cashless.go.jp/franchise/ 最終アクセス 2020年1月2日

[391] 湖東教授は「安倍内閣がキャッシュレス化を進めるため、ポイント還元制度を設けるというが、これは韓国の『クレジット控除制度という餌』を模倣したものである」(湖東京至 前掲(注)301 80頁)と指摘している。

湖東教授の指摘の通り、将来電子インボイス制度が導入されても「(課税庁が捕捉できない)穴」になる可能性がある消費者への販売をキャッシュレス決済によるデータで、課税庁側が捕捉しようという目的もあるように思われる。

[392] 玉岡雅之 前掲(注)303 134~136頁

 玉岡教授は、納税協力費用の計測をオフィシャルに行うべき、と主張する。

「ニュージーランドであれば、特に中小事業者の納税協力費用を下げるようにということで、毎年計測しています。それを下げることが、より良い税務行政の目標であるとこでやっているわけです。発展途上国でも、納税協力がなければ税収の確保ができないということでそのようなことを行っている。残念ながら日本では、そのような意識が非常に低いということです。計測が行われていません。是非とも行う必要があると強く思います。」

[393] 玉岡雅之 前掲(注)303 136頁

[394] デジタルネイティブ世代とは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代であり、日本では1980年前後生まれ以降が該当する

[395] この点で、所得税の分野では森信教授は、年金受給者から記入済み申告書を導入すべき、とする注目すべき主張をしている。

それは、年金受給者の多くは、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除等を受けるために還付申告をするが、給与所得者の年末調整のような申告負担の軽減措置がないため、およそ2400万件に及ぶ所得税(還付申告を含む)申告件数の半数以上は60歳以上の高齢者による申告が占めている。そこで、まず年金受給者から記入済み申告書が導入することで、納税者の申告負担が軽減されることとなる。

その上、税務当局においても、紙ベースの申告書を収受した場合、記入漏れや添付書類からの転記ミス、計算間違いといった納税者のミスをチェックすることに膨大な事務負担がかかっていることから、この負担を解消する意味でも、導入の意義は大きい。

さらに、所得税の確定申告書は住民税額を確定するための課税資料として使われていることから、市区町村にも同様の事務作業が発生しているため、記入済み申告書が導入されれば、市区町村は納税者が確認を終えて確定した申告情報を国税当局からデータで受け取ることが可能となるため、申告書のチェックに係る事務コスト、申告書のコピー代、データ化(パンチ入力)コスト等を削減することが可能になり、国税当局と地方自治体の申告書に伴うコストが大幅に削減されることになる、という。

森信茂樹・小林洋子「記入済み申告制度-納税者利便のための納税者番号の活用」 国際税務研究第22号 国際税制研究センター(2009年5月)46~47頁

[396] 森信茂樹・小林洋子 前掲(注)395 43頁

2000年代に入り導入国が増加していることが下記図から分かる。

[397] 中里実「今後の税制の課題と改正の動向-納税手続の簡素化を中心に」TKCタックスフォーラム2017(2018年1月)20頁

https://www.tkc.jp/~/media/Tkc/tkcnf/news/docs/taxforum2017rerepo_lc1.pdf 最終アクセス 2020年1月4日。

中里教授(政府税制調査会会長)は「誤解のないように申し上げておきたいのですが、決して記入済申告書を支持される方を批判しているわけではありません。記入済申告書を推進したいという方と、根本にある思いは一つです。しかし、せっかく年末調整という制度がありますので、それを活かして簡素化しようという次第です。」と念を押されている。

[398] 中里教授は「日本でこれから全部記入済申告書にするとなると、国税庁の職員を相当増やさなければならない上、コンピューターソフトウエアのデータも勘案しなければならない等、様々な問題の発生が想定されるため、そう簡単にはいかないでしょう」(前掲(注)397 20頁)と述べているため、現在のところ年末調整により所得税の申告が完結している給与所得者を敢えて記入済申告書により確定申告に導く必要はない(それだけの確定申告に対応できるだけのキャパシティも課税庁側にはない)という考え方であると思われる。

よって、年末調整の電子化(電子化の推進にあたっては、給与所得者に税額控除等の何らかのインセンティブを与えることが必要になると思われる)を進めつつ、同時に小規模事業者や年金所得者については記入済申告書を推進していく方向が望ましい、と筆者は考える。

記入済申告書の問題について、政府側は「申告納税制度の理念に反するような制度」(中里実 前掲(注)397 20頁)と捉えており、逆に推進派は「年末調整を廃止して税額を自らの申告により確定する自主申告制度導入することは、自らの税負担を自覚することになり、民主主義の基本ともいえる納税者意識を養い、無駄な歳出を抑制する効果を持つ。また、社会への参加意識を高め、引いてはタックスペイヤーとして、税金の使途に対する監視の目を養い、民主主義の原点につながる効果がある」(森信茂樹 前掲(注)395 47頁)と肯定的に捉えている。

政府側の見方は記入済申告書を納税者に押し付けるイメージで捉えていると思われるが、推進派は記入済申告書をあくまで、自主申告のための便利なたたき台として捉えており、その内容を納税者が精査して、時には納税者自身で訂正等を行い納得いく形で確定申告を行うというためのツールと捉えていることから、両者のイメージに開きがあるように思われる。

[399] 森信茂樹『税で日本はよみがえる-成長力を高める改革-』 日本経済新聞社(2015年3月)229~231頁

 所得捕捉に向けての熱意・努力と、納税者へのインセンティブ、さらには納税者サービスの充実は、今後マイナンバーを活用して行う国民視点に立った税務行政として、ぜひ見習うべき点であろう、と韓国政府を評価している。

 また韓国について、「世界有数のIT国家(ITを活用した電子政府)になった背景には、北朝鮮との戦時体制のもとで住民登録番号などによる国民管理の必要性があったことや、1997年の金融危機に端を発したIMF管理による抜本的な経済改革を余儀なくされたことなどがある」と分析している。

第5節 小規模事業者の行方

小規模事業者には今後も多くの困難が待ち受けている。例えば、人手不足による経営者・従業員の高齢化や、キャッシュレス決済導入に伴う利益率の低下、最低賃金引き上げによる人件費の圧迫などである。また、消費者・事業者との取引は電子化が進んでおり、対応できない事業者は市場から排除されていく。中小企業などの小規模事業者は、今後、デジタル化などの変化に適応し、生産性を上げなければ淘汰されてしまうだろう、とする見方がある[400]

 こうした厳しい現実もある一方で、シェアリングエコノミーやギグエコノミーの発展に見るように新しい技術を活用した新サービスが発展し、新しい形での小規模事業者が急増し、私たちの生活をより便利に、より快適にしてくれるという明るい未来像も描くことも可能であると思われる。その明るい未来像の先には、小規模事業者が行う様々なサービスが所得税や消費税という税収として、わが国の経済にしっかりと反映される形であることが望ましいことは、言うまでもない。

 たとえどのような未来であろうとも、事業者免税点制度は小規模事業者に寄り添い、事業経営の妨げにならぬよう制度を進化させていかなければならないだろう。


[400] 清水仁志「インボイス方式導入による益税の抑制」 基礎研レター ニッセイ基礎研究所(2019年11月)6頁https://www.nli-research.co.jp/files/topics/62962_ext_18_0.pdf?site=nli 最終アクセス 2020年1月3日

キャッシュレス決済を導入することで、カード会社や決済業者に対する手数料が発生することから、事業者の利益率は1~5%程度落ちてしまう可能性がある。